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観光の学びメモ~勉強会・セミナー参加日記~

ourism Learning Notes ~Workshop & Seminar Journal~

観光の学びメモ
~勉強会・セミナー参加日記~

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変わったこと、変わらないこと

 少し前になるが、リクルートじゃらんリサーチセンター主催の観光振興セミナーに参加した。毎年発表される「じゃらん観光国内宿泊旅行調査」をはじめ、観光や地域の変化と未来を考えるこのセミナーには、今年3月末に退職するまで毎年欠かさず参加していた。

 今年の調査結果について、主任研究員の森戸氏も触れていたが、特筆すべき大きな変化は見られなかった。傾向としては、ここ数年続いている「ひとり旅」の割合が微増、宿泊旅行の実行率は微減したものの、旅行費用の上昇により市場規模は拡大。物価高や訪日外国人の増加による間接的な影響だと容易に想像がつく。

 気になったのは、旅行費用が上がる一方で、総合満足度が低下傾向にある点だ。森戸氏の解説にもあったように、地域にお金が落ちても来訪者の満足度が下がればリピートには繋がらず、結果として持続的な観光振興にはならない。昨今メディアでも再三取り上げられているオーバーツーリズムによる地域住民への悪影響も、同様に「地域が儲かればそれで良い」という考えでは済まされない。データにもその兆しが表れており、早急な対応が求められている。森戸氏の「何のための『稼ぐ観光』なのか。地域が目指す観光の姿を、いま一度考える必要があるのではないか」という言葉には、深く考えさせられた。

 観光業界には、変わったことと、何年も変わらないことがある。変わったことのひとつは、気候変動による「旬」の変化だ。セミナーでも何度か話題に上がった「旬の再定義」は、各エリアがすぐに取り組むべき課題だと感じた。これまで当たり前に獲れていたものが獲れなくなったり、逆に育てられなかったフルーツや野菜が栽培可能になったりしている。日本は四季折々の観光資源に恵まれていたが、春と秋が極端に短くなり、いずれ二季になるのではと語る学者もいるほどだ。

 雪を観光資源としてPRしてきたエリアでは、冬の雪不足対策として何を打ち出すべきかが問われている。グリーンシーズンに絶景ブランコや展望台などのヒットコンテンツを生み出してきたように、冬にも次の一手が必要だ。同様に、カニ・ブリ・ウニ・牡蠣などの魚介類も、不漁や漁場の変化により誘客アイテムとして使いづらくなってきている。第2、第3の地域資源を見つけ出す努力が求められている。

 また、気候変動による「期待値の調整」も重要なテーマだ。例えば、避暑地と謳っているエリアが、もはや避暑と呼べる気温ではなくなってきている場合、どう対応するか。晴天率が高く星空観察が人気だったエリアで、星が見られない日が増えてきた場合はどうするか。できる時とできない時があることを事前にきちんと告知し、できない時の代替策を用意しておくことが重要になる。

 以前、星空観察ツアーが評判で予約困難だった宿に取材した際、「星が見られない時に何を提供すべきかばかり考えています」とオーナーが熱く語っていたことを思い出す。その宿のリピート率が高い理由は、クチコミを見て納得。悪天候で星が見られなかった宿泊者も、スタッフ手作りの館内イベントやおもてなしに感激し「次回は星が見たいです。また来ます」と書き込んでいたのだ。

 一方、変わらないこともある。それは、観光に携わる人々が、自分のエリアの魅力をきちんと把握し、発信していくという姿勢だ。これは観光関係者だけでなく、地域で働く人、住む人にも共通して求められる姿勢である。

 印象的だったのは、那須町のDMOが立ち上げた従業員向けコミュニティポータル(福利厚生サービス)の事例だ。インタビューに答えていた利用者は、隣県・福島県白河町在住で那須のガソリンスタンド勤務。施設割引サービスを活用し、白河に住みながらも那須で家族と買い物やレジャーを楽しんでいるという。また、宿の直前キャンセル分を地域理解のために破格で提供しているとのこと。自らが自らのエリアを体験するきっかけをつくる、素晴らしい取り組みだ。

 私自身も、観光事業者向けの講演では「自分のエリアの観光スポットや人気飲食店に、自腹で足を運び、観光客目線で体験してほしい」と話している。編集者になりたての頃「まずは自分が体験する=読者の気持ちになることが大事」と当時の編集長からよく言われていたし、私自身も強く実感している。

 少しでも多くの人に、日本の観光地で新たな発見や再発見をしてもらい、素敵な想い出をたくさん作ってもらうために、私たちがやるべきことはまだまだ山積している――そう痛感した半日だった。